XMLコンソーシアム

3.1Webサービス(WebAPI)や役立つリソースの探し方 」


西 一嘉 (東芝ソリューション株式会社)


玉川 竜司 (Sky株式会社)



近年、 地図サービスのGoogle Mapsをはじめとして、Webサービス」あるいは「WebAPI」と呼ばれる仕組みが公開されてきている(本稿ではこの仕組みを総称してWebAPIと呼ぶことにする)この仕組みは単独で直接ユーザーに使われることを意図したものではなく、同様の他のサイトと組み合わされた上で、完結したサービスとしてユーザーに提供されることを意図したものである。WebAPIを組み合わせてサービスを構築することを「マッシュアップする」という。マッシュアップを行う場合、目的に適したWebAPIを効率よく見つけることが重要なポイントとなる。

本節ではマッシュアップを行う開発者が、構築に必要なWebAPIをどのようにして探すのがよいか、関連する役立つリソースの利用方法も含めて示す。

1 WebAPIの現状

はじめにWebAPIの現状について述べる。WebAPIやマッシュアップ・アプリの数は、下図に示している通り増えてきている(下図はMushPediaのデータだが、後に紹介するProgrammableWebにも同様に増加傾向を示すデータがある)。

種類という点でも多様化が進んできており、従来の地図(Google Mapなど) ・写真(Flickrなど) ・動画(YouTubeなど) ・Eコマース(Amazonなど) ・ソーシャルブックマーク(del.icio.usなど)等に加え、twitterのような新しいサービスでもWebAPIが公開されている。




図:Mushpediaに登録されているWebAPIおよびマッシュアップ数の推移 (横軸は20074月にMasupediaが開設されてからの日数)

(出典: Mashupedia(http://www.mashupedia.jp/))


今後もWebAPIの数・種類の増加が予想されるなか、開発者は効率のよいWebAPIの探し方を身につけておく必要があるといえるだろう。

2 2通りのWebAPIの探し方

多くのWebAPIの中から目的のものを的確に早く見つけることは、マッシュアップ・アプリの開発者にとって重要なことである。

本節では、WebAPIを探す方法を2種類提示する。1つは、Googleなどの検索エンジンを用いる方法(方法1)であり、もう1つは、後述するWebAPI情報サイトを用いる方法(方法2)である。以下、両者それぞれの向き・不向きを含めて紹介していく。さらに、2.3では、(方法1)と(方法2)のどちらを利用するかを判断するためのガイドフローを示す。


2.1 (方法1)検索エンジンを用いる方法

(方法1)Googleに代表される検索エンジンを用いる方法である。留意すべき点は以下のようになる。



Googleで見つからないものは、インターネットに存在してないも同然」とも言われるように、探しているようなWebAPIが存在しているなら、検索エンジンによる適切な検索によってそこにたどり着ける可能性は非常に高い(これは、後述する検索機能中心のWebAPI情報サイトがいずれもWebAPIの提供者による登録制を取っているため、「登録されていないものは見つかりようがない」のと好対照である)。ただし、探す側には検索のスキルが要求される。具体的には、WebAPI情報サイト等で、普段からよく使われているキーワードに慣れておくことが必要になるだろう。


2.2  (方法2)WebAPI情報サイトを用いる方法

(方法2)ProgrammableWeb等のWebAPI情報サイトを用いる方法である。ここでいうWebAPI情報サイトとは、WebAPIを中心としたさまざまな情報が集約・公開されているサイトのことで、WebAPIそのものの情報や、WebAPIの利用者の声・WebAPIに関するフォーラムなどが用意されている。昨今、情報量も多く、検索しやすいWebAPI情報サイトが登場してきている。WebAPI情報サイトの利用に際して留意すべき点を以下に示そう。



2.3 検索エンジンとWebAPI情報サイトの利用選択

2.2では検索エンジンを用いて見つける方法とWebAPI情報サイトを用いて見つける方法とを示したが、本節ではどのような場合にそれらを用いるとよいか、方法選択のフローを図に示す。



図:検索エンジンとWebAPI情報サイトの利用方法選択フロー


検索エンジンを用いて見つける場合の効果的な見つけ方に関しては3節に、WebAPI情報サイトを用いて見つける場合の効果的な見つけ方に関しては4節に示す。


3 検索エンジンを用いた探し方 

本節では、検索エンジンを用いて見つける場合のWebAPIの効果的な探し方、その際の注意点等について示す。本稿では、検索エンジンとしてGoogleを例に取り上げる。


3.1 著名なWebAPIの検索

著名なWebAPI、あるいは著名な提供者によって提供されているWebAPIの場合、検索エンジンを使った検索は容易である。「著名」な名称と、「WebAPI」あるいは「WebService」「Webサービス」などのキーワードを組み合わせて検索すればよい。この際のTipsを以下に示す。



3.2 キーワードを使ったWebAPIの検索

たとえば「天気」「株価」といったキーワードを使ってWebAPIを検索することが考えられる。ただしこの場合、まずは後述するWebAPI情報サイトでの検索を試してみたほうが効率がよいだろう。WebAPI情報サイトで希望するAPIが見つからなかった場合は、より広い範囲を検索対照するために、検索エンジンを利用するべきである。その際のTipsを以下に示す。



4 WebAPI情報サイトを用いたWebAPIの探し方

本節では、WebAPI情報サイトを用いる場合のWebAPIの効果的な探し方、その際の注意点等について示す。まず、現在公開されているWebAPI情報サイトの中で、本書で紹介したい代表的なものを説明する。その後、WebAPI情報サイトを用いたWebAPIの探し方、その際の注意点等を示す。


4.1 概要

WebAPI情報サイトを用いてWebAPIを探していくステップは、おおよそ以下のようなものとなろう。

  1. WebAPI情報サイトを用いて(→4.2 WebAPI情報サイトの紹介)、目的に合ったWebAPI候補をリストアップする(→4.3 効果的な探し方)

  2. チェック項目に沿ってWebAPIをしぼる(→4.4 チェック項目について)

  3. (必要なら)サインアップして詳細を確認する(→4.5 サインアップについて)


以下、それぞれのステップについて詳細を述べる。

4.2 WebAPI情報サイトの紹介

まず、代表的なWebAPI情報サイトを紹介する。検索機能中心のサイトとしてProgrammableWebおよびMashupediaを、紹介記事中心のサイトとしてeHubおよびusingAPIを紹介する。なお、登録数をはじめとしたWebAPI情報サイトのデータは20075月現在のものである。


4.2.1 ProgrammableWeb

 

 

 

図:ProgrammableWebのトップページ

(出典:ProgrammableWeb (http://www.programmableweb.com/ ))


URL

http://www.programmableweb.com/

運営管理

John Musser

登録数

WebAPI数:約400
マッシュアップ・アプリ数:約1900

登録情報の管理

WebAPI/マッシュアップ提供者による登録。

提供者の認証や管理者による内容のチェックはされず、そのまま公開 。

特色

世界的にメジャーな情報サイト 。WebAPIの検索に好適。
カテゴリ、日付け、スコア等によるソートが可能。
フォーラムなども提供している。


4.2.2 Mashupedia

 

 

 


図:Mashupediaのトップページ

(出典:Mashupedia (http://www.mashupedia.jp/ ))


URL

http://www.mashupedia.jp/

運営管理

株式会社ベクター

登録数

WebAPI数:約150
マッシュアップ・アプリ数:約90

登録情報の管理

マッシュアップの情報は、Vectorパスポート会員のみ登録できる。登録された情報はそのまま公開されるが、同時にスタッフによるチェックも行われている。

2007年6月現在、WebAPI情報の登録・公開はスタッフによってのみ行われている。

特色

日本語の情報サイト。
WebAPI
ごとのフォーラムなども提供。


4.2.3 eHub

 

 

 

図:eHubのトップページ

(出典:eHub (http://www.emilychang.com/go/ehub/ ))


URL

http://www.emilychang.com/go/ehub/

運営管理

Emily Chang

登録情報の管理

管理者による登録および公開。

特色

管理者が注目しているWebアプリケーション、サービス、リソース、ブログ、サイトをまとめた情報や、Webサイト作成者に対するインタビューを公開。
日常的な情報収集に好適。


4.2.4 using API

 

 

 


図:using APIのトップページ

(出典:using API (http://api.zuzara.com/ ))


URL

http://api.zuzara.com/

運営管理

船木信宏氏

登録情報の管理

管理者による登録および公開。

特色

日本語でのWebAPI情報サイトの先駆けのひとつ。



4.3 効果的な探し方

4.2のステップ2 WebAPI情報サイトを用いて、目的に合ったWebAPI候補を探す」における効果的な探し方に関して、ここでは有効な手法を二つ紹介する。

(1)
プロトコルやデータフォーマットを用いてキーワード検索を行う。こうすることで、より的確に検索結果を絞り込むことができる。

例.プロトコル(例.REST)やデータフォーマット(例.XMLJSON)を検索キーワードに含める。

(2)
利用予定のWebAPIと一緒に使われているWebAPIを探す

構築しようとしているマッシュアップ・アプリにおいて利用予定のWebAPIがある場合、既存マッシュアップ・アプリ情報から、そのWebAPIとあわせて使われた実績のあるWebAPIを見つけていくことができる。

こうすることで、利用予定のAPIと組み合わせた場合にどのようなマッシュアップが成り立つのか、ひいては構築しようとしているマッシュアップ・アプリの要素としてそれらのWebAPIが適切なのか、参考情報を得ることができる。


4.4 チェック項目

WebAPIの候補が複数見つかった場合、以下のようなチェック項目で絞り込むとよい。

項目

内容

機能

WebAPIの内容ページを確認して、必要な機能を満たしているかチェックする。

  • プロトコル

  • データ形式

  • データ項目

などが代表的な機能である。

マッシュアップ・アプリ事例

手っ取り早く機能チェックする場合に有効である。大体どんなことができるのか、できないのか、見てみることができる。

例)海外運営の天気情報マッシュアップサイトを見て、使用している天気情報WebAPIが日本の情報も提供しているのかをチェック

ただし、機能的に不足が感じられた場合でも、それがWebAPI側の機能不足に起因するものなのか、マッシュアップ側の実装に起因するものなのか注意が必要である。

利用規約

WebAPIの利用規約を確認する。

  • 表示義務

  • 公開義務

  • 利用回数制限

  • 商用利用制約

  • 免責事項

  • 利用料

などが目的用途に合っている必要がある。

利用者の声

WebAPIの既存の利用者の声を確認する。

  • レーティング

  • フォーラム

  • マッシュアップ・アプリ数

  • インタビュー記事

などを参考にしてみるとよい。


4.5 サインアップ

WebAPIによっては、サインアップして実際に使ってみなければ細かな機能がわからないものも多いだろう。 ここまでの過程で、ある程度利用できる見込みが立ったAPIについては、必要であればサインアップして試用してみる。言うまでもないが、サインアップする前には特に利用規約や登録情報の取り扱い条件等をしっかり確認しておかなければならない。


5 まとめ

本稿では、Webサービス(WebAPI)や役立つリソースを探す場合、検索エンジンを用いて探す方法と、WebAPI情報サイトを用いて探す方法とがあり、それらには向き不向きがあることを示した。


さらに、WebAPI情報サイトを用いる場合の検索の流れを示すとともに、その際の効果的な手法やチェックすべき項目も示した。


 これらを、マッシュアップ・アプリを構築する際の参考にしていただきたい。


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